前立腺癌体験記

 今上天皇陛下が15年前、前立腺癌の手術をされたというニュースが流れてから、国中で前立腺癌検診が広まった。市の誕生月検診で調べますかと聞かれ、血液検査をしたらPSAが5と出た。そして、泌尿器科に行けと云われた。

 大病院にはかかったことがないので、一番近い泌尿器科の専門医を探して受診した。薄いゴム手袋をして、肛門から指を入れて直腸側から前立腺に触って、肥大は無いがPSA が5だから癌がありそう。生検をやってはっきりさせましょうか、と聞かれたが
、自覚症状が全くないし、医師の話も切迫感が無く、考えてみると返事してそのままになった。

 それから15年、尿の出方が異常になった。
頻尿である。歩いているときに我慢が出来ず、幸い線路わきの畑道だったので、たちしょんで放尿。

 然し、異常を感じ、それに循環器で大病院にかかっていたから、泌尿器科を受診した。

 簡単な尿の出方の検査後、生検をやった。
理髪店の椅子みたいなところに座り、肛門から金具を入れる。先端から針が延びて、前立腺に突き刺される。麻酔で痛みは無い。いろんな部分から取る。いくつ取ったかは覚えていないが8個は取った。顕微鏡検査で前立腺全体が癌組織になっていた。

 こうなると、転移が予想され、CTだのMRI だので検査。リンパ節に転移確定。さらに、骨シンチという検査で身体全体の骨に転移が確定。これでは前立腺全摘出しても無意味。治療法は放射線照射で前立腺とリンパ節のガン組織を死滅せしめ、前立腺癌の栄養源が男性ホルモンだから、ホルモン抑制剤を腹部に皮下注射し続け、癌が活性化しないようにする。骨にとりついている癌の栄養源は骨そのもの。
だから、カルシウムを補充する注射をやはり腹部に
皮下注射する。

 このような治療法が確立されており、自分は既にPSA が0.16まで減り、安定している。

 大変だったのは放射線治療だった。土日を除き、毎日通院した。毎回照射は数分。約2ヶ月かかったが、前半は前立腺、後半は少し短く、リンパ節への照射である。

 自分は15年も放置したから、大変なことになった。癌が前立腺の中だけなら、小さなカプセルに同位元素を入れて、前立腺に埋め込むだけだから、簡単に癌を死滅させ、完治できる。

 前立腺癌は男性の半分がかかる。そして、遺伝する。

 是非40~50歳でPSA 検査を受け、初期に治療を始めるべきである。